「あなたは保険に入る必要はありません」。保険の診断を受けると、けっこうな数の人にこんなメッセージが出る保険相談サービスがある。マネーフォワードがライフネット生命などと始めた「保険の見直し診断」だ。
個人向け家計簿サービス「マネーフォワードME」の中の、「固定費の見直し」コーナー内で7月からサービスを開始した。家計簿に登録されている情報を元にして、追加で必要な項目だけを入力してもらえば診断を行うのが特徴だ。面倒な情報入力をほとんどせずに、ユーザーごとのライフプランを計算して必要な保険を提案してくれる。
「ミッションは個人のお金の悩みを解決していくこと。それには、家計と資産形成にフォーカスしなくてはならない。家計の改善に手っ取り早いのは固定費。そこで最初は電気代からスタートし、そのほかの固定費に広げていこうとした。この1年悩んでいたときに、ライフネット生命さんが掲げている『必要な分だけ保険に入りましょう』というコンセプトが合致した」と、担当した事業開発部の志賀俊一部長は話す。
マネーフォワードが保険の代理店となり、顧客の状況を診断して、ライフネット生命などの保険を販売する仕組みだ。保険の見直しサービスは、保険販売では定番の手法であり、ファイナンシャルプランナーや来店型保険ショップをはじめ、多くの代理店が行っている。しかし、最終的には別の保険を勧めて乗り換えてもらうのが主目的であり、「全く不要です」と説明することはまれだ。
「ビジネスとしては(保険を)売ったほうがいいが、われわれの定義で不必要だと思う人にまで、保険に入ってほしくない」(志賀氏)
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マネーフォワードが考える保険
では、どんな人がどんな保険に入ったらいいのだろうか? 「日本の社会保障制度はかなり整っていて、かなりの部分がカバーされる。この事実を知ってほしい。その上で、必要な保障額を考える機会を提供する」と志賀氏は言う。マネーフォワードは、Webページの「固定費の見直し」の中で、その考え方を紹介している。
例えば、多くの人が入っている医療保険はどうだろうか? 「基本的には医療保険は必ずしも検討しなくてもよいと考えており、貯蓄で必要な医療負担に対応することを推奨しています」としている。その理由は下記の3つだ。
- 公的医療保険制度では、医療費の自己負担額に上限がある
- 公的医療保険制度の範囲外は、「治療のために必ず発生する要素」ではない
- 医療技術の進歩や医療情勢に加入後の医療保険が追いついていない場合がある
高額な医療費が掛かっても、最終的に自己負担しなくてはいけない額はそれほど多くない。この限度額を理解して、貯蓄や金融資産で備えることが重要だという。それでも医療保険に入りたい場合は、「給付が受けられる安心感のためのお守り」と考えることが大事だとしている。
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死亡保険についてはどうか。そもそも死亡保険は、自分が死んだときに遺族が生活を維持するためのものだ。そのためには、まず社会保障制度によってどのくらい保障されるのかを理解すること。そして、「遺族が生活を立て直すために必要な資金は、可能な限り金融資産として備えることを推奨」している。
その上で、「遺された家族に必要となるお金」から「遺された家族に入ってくるお金」と「金融資産」を引き、残りが保険で備えるべき必要保障額になる。「いくらないと不安か?」ではなく、金融資産額や配偶者の収入を踏まえて、どれくらい足りないかを理解した上で、必要な分だけの死亡保険に加入すればいいという考え方だ。
「保険の考え方は人の数だけあっていい。実際、自分も多く遺したいと考えたこともある。ただし、たくさん遺すと、それが遺族の今後に良く働くのか。自分で経済活動を行うのは社会へのつながりにもなる。遺族が全く働かなくても生活できるお金を遺すのも一つの考え方だが、それによって今の価値が毀損(きそん)されてはいけない」(志賀氏)
こうした考えに近いのがライフネット生命の保険だ。ライフネット生命の代理店推進部の小島勤也氏は、同社の保険の特徴を「保障内容をシンプルにする。特約はできるだけ付けない。付加保険料もできるだけ安くする。請求も一部商品の支払いでは診断書なしでできるような取り組みをしている」と話す。
付加保険料というのは、保険を運営するための保険会社の経費だ。保険金支払いの元となる純保険料は、加入者が同条件であれば各社でほとんど変わらない。保険会社によって保険料が異なるのは、この付加保険料の違いが大きい。
ライフネット生命は、ネットで生命保険を販売することで大きく経費を削減し低コストな保険を提供しているが、「安かろう悪かろうなのではないか?」と見られることがあったという。そのため、業界に先駆けて保険料に対する付加保険料率を公開した。「我々が安いのは、経費を抑えているからです」と理解してもらうためだ。
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保険大国日本
日本は公的医療保険制度が充実していて、働けなくなったときでも健康保険加入者であれば、傷病手当金が最長1年6カ月支給されるなど、さまざまな社会保障が用意されている。にもかかわらず、生命保険文化センターの「生活保障に関する調査(令和元年版)」によると、約8割の人が生命保険に加入している。さらに、7割以上が医療保険に、4割近くががんに対する保障に加入している。
同センターによると、世帯あたり年間で払っている保険料は平均で37.1万円となっており、月平均で3万円を超えている。10年で371万円、30年で1100万円を超える計算だ。一方で、総務省の家計調査報告(令和2年)によると、勤労者世帯(2人以上)の貯蓄額は、平均で1378万円、中央値は782万円だ。
この貯蓄の内訳を見ると、「生命保険など」が22.1%を占めており、株式などの有価証券は11.5%に過ぎない。金融庁などが「貯蓄から投資へ」と旗を振っても、実際にお金を費やしているのは保険というのが実情だ。
昨今は、外貨建て変額保険など、保障だけでなく運用も組み合わせた保険商品の販売が盛んだ。こうした保険はどうか。志賀氏は、すべての貯蓄型保険に当てはまるとは限らないとした上で、「分離した方が効率がいい。初めは保障と資産運用がいっしょにできたら、一石二鳥ではないか思っていたが、分けて計算してみると効率が違う」と話す。
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ネットでは、「保険不要論」が話題になることも多いが、めったに起きないが起きてしまうと致命的な事態に備えるためには保険は必須だ。問題は、人は不安を感じると不必要な保険にも入ってしまう傾向があることだ。
そして老後不安の解消には、貯蓄や金融商品への投資など、退職金や年金だけに頼らない資産形成がかかせない。要は、保険と貯蓄のバランスが大事だということになる。マネーフォワードの「保険の見直し診断」は、同社ならではの視点に立って、保険という費用と貯蓄のバランスをうまく取った提案をしてくる。
もっとも、いろいろな視点を入れ込む工夫も始めた。当初は診断をしたユーザーのうち多くが「保険は不要です」と表示されたようだが、その後、「最短で生活を立て直すまで」「子どもが独立するまで」「配偶者の一生涯」と、保障したい期間を選んで診断ができるようになった。当然「配偶者の一生涯」を保険でまかなおうと考えたら、保障額は相当な額になる。
それでも、保険を売るための診断ではなく、不要な人には不要とはっきり言ってくれるサービスを、保険会社とその代理店が提供するのは、マネーリテラシーが新たなステージに入りつつあることを感じさせる。
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October 22, 2021 at 05:00AM
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