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ネットカジノに消えた4630万円 「仮想通貨で隠蔽」は可能なのか? - ITmedia ビジネスオンライン

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 阿武町が、世帯あたり10万円の給付金の総額4630万円分を一人の男性に誤送金してしまった問題が連日、報道されている。5月18日夜にはこの4360万円を使い込んだとされる田口翔容疑者が、電子計算機使用詐欺の疑いで逮捕された。

 田口容疑者は自ら警察に出頭して供述しており、犯罪になるとの認識も示し、さらには(返済原資にまったくあてはないものの)口頭では返金を約束してるという。この事件の行方は、捜査当局によって今後調べられていくだろうが、特に注目されるのはその“お金の行方”だろう。

“お金の行方”に注目が集まる、誤送金事件(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 田口容疑者が本当にネットカジノでお金を使い果たしてしまったのかどうか。現時点では真相は分からないが、「使っていない可能性」はあるのだろうか。

 仮想通貨などに日常的に接していなければ、情報番組などを見ていても分かりにくい面もある。そこで「実際に隠蔽したかどうか」の事実関係は脇に置いて、「使わないまま資産を隠す」、つまりマネーロンダリングをすることは可能なのかどうかについて、本記事では検討していく。

警察は円建て送金を立件も、気になるのは海外送金

 今回の事件では、4630万円のうち3592万円あまりがドル建てで海外ネットカジノの口座に送金されており、一回の送金単位は1万ドルだった。おそらく買い物、あるいはネットサービスの利用料と思しきデビット決済や円建て送金もあり、円建て送金の件で警察は立件。この送金先は国内事業者(あるいは情報提供に応じた事業者)である可能性が高そうだ。

 具体的な罪状はともかく、刑事事件でも裁かれることになりそうだが、一方で気になるのが、幾度となく送金された海外ネットカジノ口座のお金だ。

海外ネットカジノでは、日本の法律による捜査が難しい

 口座への送金は、誤送金された4月8日の2日後、4月10日から開始されており、一日に何度も送金されて、最終的には27回にわたって送金された。つまりネットカジノの口座には合計27万ドルが振り込まれたことになる。

 この程度の金額であれば、掛金にもよるがカジノであっという間に失うことは可能だろう。従って田口容疑者が使い切ったという説明に合理的な疑いはない。

 ただし、海外事業者だけに、田口容疑者の口座履歴を参照することはかなり難しいのではないか。日本の事業者であれば、日本の法律のもとに情報を提出させることができるが、プライバシー管理が徹底されたカジノならば、容疑者が自ら提出しない限り、口座履歴を確認できないだろう。

海外ネットカジノはプライバシー管理が徹底されている(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 また仮に口座の中身が空になっていたとしたら、筆者なら口座そのものを閉じる(IDを削除する)。閉じてもカジノ業者が協力すれば情報は引き出せるが、取調べの中で自分から証拠を提出することは不可能になる。

 また海外ネットカジノには仮想通貨のウォレットと直結できるものも多い、ネットカジノへの入金はあっても出金がなかったとする報道や意見も見かけたが、そもそもお金を隠すことが目的ならば、入金したお金を公的な金融機関口座に戻すことはないはずだ。

追跡が困難になる、仮想通貨のウォレットとは?

 公的に認められた金融機関に口座は、マネーロンダリングを防ぐためのさまざまな規制のもとに運用されている。ネットカジノに一度お金をつぎ込んだとしても、日本の口座に戻していれば、いずれはバレてしまう。海外の銀行口座は簡単には作ることができない。

 しかし、仮想通貨のウォレットならば簡単だ。

 世界中にたくさんのウォレットサービスがあり、その中にはもちろん日本の事業者もある。さらに、取引所を介さず、自身でスマホやPC、ソフトウェアを使って仮想通貨を管理するプライベートウォレットを作ることもできる。

 ウォレットには仮想通貨を保管しておくことが可能だが、プライベートウォレットの場合、個人情報を何ら登録せずに作成と保有が可能なため、極めて匿名性が高く、追いかけることは困難だ。

プライベートウォレットに仮想通貨を保有すれば、追跡は困難に(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 ネットカジノは、すぐに大金を振り込んでゲームを続けたいという顧客に迅速に対応するため、仮想通貨の速やかな送金処理が可能になるよう、オンラインでウォレットと接続しているものが多い。ラスベガスのカジノに出金上限の高いATMマシンが置かれているようなものだ。

 もちろん入金だけではなく、出金もできる。つまり海外ネットカジノに送金するところまでは容易に追跡できるが、そこから仮想通貨のウォレットに送金されると追跡は困難になる。

 ネットカジノからの出金時に指定するウォレットとして、プライベートウォレットを使った場合、ますます追跡は困難になる。ウォレット自体に匿名性があるため、取引を一つずつ追いかけるしかない。

出所後に、価値高騰の可能性も?

 ここまでは、仮想通貨を扱ったことがある人の多くが簡単に思い付くことだろう。

 仮想通貨にもビットコインやイーサリアム、リップル、USDTなどさまざまなものがあるが、仮想通貨のシステムを維持するノードを特定業者などが運営するトークン(Binanceなど)でなければ、管理する組織すら存在しない。

 仮想通貨の取引はブロックチェーンに記録され、改ざんすることはできない。しかしながら、ウォレットの保有者が誰なのかを突き止めるのは極めて困難だ。さらに複数のウォレットに細かく分散して再送金したり、異なるトークン間でのクロス取引などが行われていれば、さらに追跡の難易度が上がる。とりわけ管理主体となる組織が存在していない大多数のトークンでは、捜査は困難だろう。

 資産が確認できなければ、返済の意思を示していても、収入に応じた返済計画通りに少しづつ弁済させるほかない。

 田口容疑者が実際にどの程度の刑に処されるのか分からないが、懲役の実刑が出たとして数年後にコールドウォレットから仮想通貨を取り出すと、元の3592万円はもちろん、誤って振り込まれた4630万円よりも高い価値になっているかもしれない。

隠し持った仮想通貨が、出所後に高騰している可能性も(画像はイメージ、提供:ゲッティイメージズ)

 よく知られているように仮想通貨はボラリティ(価格変動幅)が大きく、例えばコロナ禍には大幅に価格が伸びた。その一方で昨今はその価値が急落するなど、短期的に資産が大きく減ってしまうリスクはある。

 しかし数年単位などの長期で見た場合、ビットコインは概ね上昇を続けてきた。実刑を受けて数年後に出所した時、隠し持った仮想通貨が大幅に上昇しているということも可能性としては十分にある。実際に昨年末には、ソニー生命の社員が海外連結子会社の米口座から170億円を不正取得し、それらをビットコインに交換していたという事件も起こっている。

 繰り返しになるが、実際に田口容疑者が、数年後の価格上昇なども見込んで資産隠しを図ったのか、それとも本当に使い切っているのかどうかは分からない。確実に言えるのは、海外事業社が運営する「ネットカジノ口座の動き」が見えない限り、27万ドルの行方は見えてこないということだろう。

著者紹介:本田雅一

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ジャーナリスト、コラムニスト。

スマホ、PC、EVなどテック製品、情報セキュリテイと密接に絡む社会問題やネット社会のトレンドを分析、コラムを執筆するネット/デジタルトレンド分析家。ネットやテックデバイスの普及を背景にした、現代のさまざまな社会問題やトレンドについて、テクノロジー、ビジネス、コンシューマなど多様な視点から森羅万象さまざまなジャンルを分析・執筆。

50歳にして体脂肪率40%オーバーから15%まで落としたまま維持を続ける健康ダイエット成功者でもある。ワタナベエンターテインメント所属。


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May 21, 2022 at 05:00AM
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