SNS発信、始めてみようと思うけど…女性へのネット中傷、実態や対策は？識者に聞いてみた：東京新聞 TOKYO Web - 東京新聞

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　地方支局から東京本社のデジタル編集部に異動し、手付かずだったSNS発信にも取り組んでみようかと思っている。ただ、インターネット上で毎日のように起こっている誹謗（ひぼう）中傷や攻撃、炎上が気になる。ネット上の諸問題に詳しい国際大学グローバル・コミュニケーション・センターの山口真一准教授に、女性へのネット中傷の実態や傾向について聞いてみた。（デジタル編集部・小寺香菜子）

◆セクハラ被害は女性の方が多い

　—SNSでは、男女どちらの方が誹謗中傷を受けやすいのか。

　ネット上でSNSや動画共有サービスを使っている人1万7385人に対し、過去1年以内に誹謗中傷を受けた確率を調査した。結果、男性が5.6％、女性が3.8％で、男性の方が高かった。他の団体の調査では、女性の方が多いとするものもあり、乖離（かいり）がある。

山口真一准教授（国際大学グローバル・コミュニケーション・センター提供）

　乖離の要因としては2つ考えられる。今回はDMやリプライで直接攻撃されたものを調査した。それ以外の攻撃もあるので、（他の団体の調査では）それで攻撃を受けたと感じた人が多い可能性もある。

　もう一つは、今回の調査では誹謗中傷を脅迫・恐喝、差別など9つに定義したが「誹謗中傷を受けたことはありますか」と聞く調査もある。通常の批判でも誹謗中傷ととらえる人もいて、そういったところで乖離があったのかもしれない。

　—受ける誹謗中傷の種類や内容について、男女で違いはあったか。

　9つに定義した誹謗中傷の中で、「『裸の写真を見せろ』『下着の色を教えて』などの性的な表現や画像の要求、画像の送信」といった「セクハラ」は女性1.2％、男性0.5％と女性の方が高かった。

　最近では、インスタグラムやティックトックなどで自分の容姿を出した状態で発信するのが簡単になった。その結果、ごく一部の心ない人から、侮辱的なことを言われたり、セクハラを受けたりすることが問題になっている。

　SNS上でも、高校生の女性がアップしたものに対して、大人の男性がセクハラしたり、上から目線でものを言ったりする事例が見受けられる。

◆無意識な偏見が働くことも

　—女性ジャーナリストへの誹謗中傷については。

　世界的に見ても女性ジャーナリストへの誹謗中傷は課題になっており、実際に被害を受けている人もいる。セクハラもそうだし、女性に対して上から目線でものを言う男性は世の中に一定数いて、そういう人が攻撃を加えていることが多いんだろうという予想は立つ。

　—女性へ誹謗中傷する人の意識を変えるにはどうすれば良いか。

　性別に限らず、人種などで人を区別することは本来あってはならないことだが、それが常識になってしまっている人がいる。その人たちの難しいところは、無意識にやっていること。「アンコンシャスバイアス」（無意識の思い込みによる偏見）が働いてしまっている。

　だから、若い人たちは、アンコンシャスバイアスにのまれないようにしなきゃいけない。中高年以上の人は意識をアップデートしてほしい。

◆実名より匿名の方が誹謗中傷受けやすい

　—SNSを使う際に、炎上や誹謗中傷を未然に防ぐにはどうすれば良いか。

　誹謗中傷を受けやすい人の特徴は見えている。①自撮り写真②恋人やパートナーとの仲の良い様子③政治の話題—を投稿する人は攻撃を受けやすい。それらを投稿するなと言う気は全くないが、自撮りや政治の話をすると、高確率でかみついてくる人はいる。それはリスクとして覚えておいてほしいし、そういう人に対しては冷静になってミュート（特定のアカウントの投稿を表示しない機能）にするなど、対処をしてほしい。

　他にも、実は本名を記載している人の方が、非公開設定にしている人に比べ誹謗中傷の経験率が低かった。考えられるのは、実名を出している人の方が投稿内容などに気をつけていることや、攻撃する側も「相手が人間である」ということを意識するということだ。

　自分が非公開設定や匿名だから大丈夫と思って使うのではなく「こういう話題は不快に思う人がいるかもしれない」と考えながら投稿した方が、攻撃される確率は低くなる。