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アメリカで注目集める新興ネットメディア「アクシオス」編集長に聞く強さの秘密<メディアと世界> - 東京新聞

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 米国の新興メディア「アクシオス」が注目を集めている。スマートフォンでニュースを読むのに適した箇条書きの短い文章という独自の記事スタイルが好評で、コロナ禍でも収益を伸ばしている。今年からローカルニュースにも進出したアクシオスのニコラス・ジョンストン編集長(43)にオンライン取材で強さの秘密を聞いた。(ワシントン・白石亘)

◆スマホに合わせた簡潔さがモットー

アクシオスのニュースサイト。2段落目に「なぜ重要なのか」とあり、2分で読める記事になっている

アクシオスのニュースサイト。2段落目に「なぜ重要なのか」とあり、2分で読める記事になっている

 アクシオスは2017年に政治サイト「ポリティコ」の元記者らが創刊したネットメディア。トランプ前大統領に単独取材するなど、米メディア界でも存在感が高い。特に目を引くのは、人々のスマホの利用方法に合わせた短い文章の記事スタイルで、「スマートな簡潔さ(Brevity)」をモットーに掲げる。

 「創刊時は『短いニュースは本当のジャーナリズムじゃない』とバカにされたが、批判はなくなっていった。単語数にして150~200の短い記事でも多くのことを語れると証明できたからだと思う。逆に言えば、大統領が何かを発表しても800語もの長い記事は必要ない。スマホで1~3分で読めるモバイル・ファーストをうたい、記者には『とにかく重要な部分だけを残せ』と厳しく要求している」

 「読者にすれば、このニュースは何が新しくて、なぜ重要なのかが知りたい。だからわれわれの記事では2段落目で『なぜ重要なのか』というフレーズをよく使う。読者の反応も非常に良く、やりがいを感じる」

◆読者の「読む時間」を尊重

ニコラス・ジョンストン編集長

ニコラス・ジョンストン編集長

 ワシントン近郊に本社を置き、記者は80人。決して多くはないが、情報源を持つ政界やハイテク業界のスクープを放つなど、取材力に定評がある。アクシオス(AXIOS)はギリシャ語で「価値のある」を意味するが、読者に時間を費やす価値のあるニュースを届けることにこだわる。

 「スマホは誰にとっても世界につながる窓で、食事を注文したり、映画を見たり、子どもの写真を見たり、あらゆることができる。人々の注意を奪い合う意味では、ジャーナリズムも同じ生態系(エコシステム)の中にいる。ユーザーのデータを見ると、人々は自分の時間を非常に大事にしており、10秒以内にほしい情報が得られなければ、ユーチューブに行ってしまうだろう」

 「情報過多のメディア環境では、いかによりスマートにより早く読んでもらうかが重要だ。親指を動かすだけで世界中の情報にアクセスできる時代に、人々は長い記事で要点を説明されても我慢できない。その意味で、われわれは読者の時間を尊重しているだけだ」

◆毎朝配信するニュースレターを重視、コロナ禍でも売上増

 アクシオスはニュースサイトを運営するが、最も重視するのは毎朝読者に配信するニュースレターだ。購読者は140万人と、過去1年で倍増した。記事を無料で公開しており、広告が売上高の8割を占めるが、中でもニュースレターのスポンサー広告が最大の収益源で、ITや金融などの大企業が広告主だ。コロナ禍で多くのメディアが広告減に苦しむ中、昨年の売上高は6000万ドル(約63億円)と前年比4割も増えた。

 「ニュースレターを届ける電子メールは40年以上前からある古い技術だが、現在のネットでは珍しく安全な場所だ。交流サイト(SNS)では悪質なニセ情報が飛び交っているが、迷惑メールはブロックできるし、受信箱の中から読みたいメールだけ読めばいい」

 「トランプ時代の米国はジャーナリストが台頭し、記者の署名がより重視されるようになった。トランプ担当記者のうち、ニューヨーク・タイムズ(NYT)のマギー・ハバーマン記者は最も優秀な1人だが、読者はNYTというより彼女の記事を読みたい。アクシオスのニュースレターでも記者個人に共感する読者が多く購読している。書き手と読み手のつながりが非常に重要になり、ニュースレターは素晴らしい方法だ」

 「ネットの影響で新聞の存在感は低下したが、真に優秀なジャーナリストはますます重要になっている。才能のあるジャーナリストが到達できる読者の数は非常に大きいからだ。米国でニュースレター配信のプラットフォーム『サブスタック』が人気となり、メディアから独立した著名なジャーナリストが相次いでニュースレターの配信を始めているのもこのためだ」

◆「ニュース砂漠」解消へ…ローカルニュースに参入

 アクシオスは今年、ローカルニュースに参入した。ミネソタ州ミネアポリスやアイオワ州デモインなど4都市に記者を2人ずつ置き、ローカルニュースで収益を上げるノースカロライナ州のネットメディアも買収した。新たな挑戦の背景には、広告収入の落ち込みで地方紙の廃刊が相次ぎ、必要不可欠な情報が得られない「ニュース砂漠」が社会問題化していることがある。

 「創刊時からジャーナリズムを支えることのできるビジネスモデルは何かを常に考えてきた。米国では良質な情報源が失われるにつれ、ニセ情報が横行するようになった。SNSがこうした傾向を助長しており、民主主義が機能しなくなりつつある。今回新たに記者を雇い、地域のコミュニティーに加わるが、持続可能な収益モデルはスポンサー広告なのか、それとも読者の会員制や寄付なのか見極めたい。試行錯誤の段階だが、ニュース砂漠を解決する方法を見つけられれば多くの都市に進出したい」

 「地域のジャーナリズムを置き換えるのではなく、地域の情報圏の一部になりたい。アクシオスは全米レベルで現代のニュース消費に最適な手法を見つけた。例えば、地元メディアがスクープを放てば、それを無視せず、われわれのスマートな方法で読者に伝える」

 「それぞれの街で影響力のある人々の必読メディアになるのが目標だ。例えば、その街の病院の院長や大学の経営者、自動車ディーラーのトップが朝起きて、アクシオス・ローカルを読むようになったらうれしい」

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February 14, 2021 at 10:00AM
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