スマホのフィルタリングや利用制限では子どもを守れない(写真はイメージです) Photo:PIXTA |
近年、SNSがらみの事件に巻き込まれる18歳未満の児童が増加しています(警察庁「2019(令和元年)の犯罪情勢」より)。さらに、自粛期間の長期化で子どもたちがスマホにふれる時間も増えているといいます。「有害サイトのブロックや利用制限をかけているから大丈夫」と親が思っていても、最終的には子ども自身の行動がきっかけで多くの事件が起きているのが現状です。そこで今回は、元捜査一課でデジタル捜査班の班長を務めた佐々木成三さんの新刊『元捜査一課刑事が明かす手口 スマホで子どもが騙される』(青春出版社)から、最近増えているスマホ関連の事件と対策を紹介します。
一度かかわると逃げられない闇バイトのしくみ
闇バイトによる特殊詐欺は年々検挙数が増えています。闇バイトとは、高額報酬をうたって振り込め詐欺の受け子のような特殊詐欺をさせる仕事のこと。
バイトを探している少年が、「日給3万円・スーツ支給・仕事はものを受け取るだけ」という求人を見たら、「ラッキー!」と思ってしまうかもしれません。でもよく考えれば、これは特殊詐欺の受け子です。「何かおかしい」という考える力が足りず、視野も狭いために犯罪に巻き込まれてしまうのです。
さらに、闇バイトが厄介なのは、一度関わると逃げられない仕組みになっているところです。闇バイトの募集告知の多くには「身分証明書必須」などと書かれています。応募時に、運転免許証などの顔写真付きの身分証のコピーや、携帯電話の番号、父親や母親の連絡先から住所まで、本部に伝えなければなりません。
逃げようとすると、「情報を全部アップするぞ」「運転免許証の画像をアップして、さらし者にするぞ」などと脅されてしまうのです。
子どもに事前に犯罪の手口を伝えておく
まずは、子どもに先のような犯罪の手口を教えることです。「受け子」などのわかりやすい言葉で誘うケースはまずなく、「日払い」「高収入」など、直接的な表現を避けて募集を続けているのが特徴です。
闇バイトを始める前に、免許証や学生証等、顔写真を送るよう指示され、もし逃げたら「大学にバラすぞ」。さらに、「就職先にバラして就職させないぞ」と脅迫されるので注意です。
「知らない人」と共通の趣味で仲良くなるのが当たり前の時代
ここ最近、SNSやゲームがらみの子どもの誘拐や監禁事件を多く目にするようになりました。犯人の多くは大人の男性。子どもからすると立派な“おじさん”が、子どもを連れ去り、ひどい場合は長期間監禁、最悪の場合は殺してしまうこともあります。
その2人の接点となるのが、SNSやオンラインゲームです。今は知らない大人と子どもが共通の趣味を通じて知り合うのが、当たり前になっています。子どもにとって、ゲームで一緒に遊ぶ人は、もはや“知らない人”ではありません。
子どもは、聞かれれば自分の名前や住所を教えてしまうでしょう。それがどれほど危険かということまでは、わからないからです。
交流サイトの目的は「児童との性交」が70%
SNSには性犯罪を狙う犯罪者たちがうようよしているのが現実です。警視庁で交流サイトを利用した犯罪の被疑者に犯行動機を聞いたところ、「児童との性交目的」が70%というデータが出たのです。
ところが当の子どもたちにしてみれば、本気で「善意で助けてくれるいい人」と思っている子がほとんどなのです。
親子の会話でオンラインゲームの危険やルールを伝える
子どもにスマホを買い与える際に、アダルト関連や違法サイトなどの有害情報を見られないように制限しただけで安心している親がほとんどではないでしょうか。しかし、子どもがスマホで何をやっていたのか、事件後に親は初めて知って驚くのです。
13歳未満の子どもは自分のGoogleアカウントを持てません。親のみなさんが子どもにゲームをさせるためだけの目的でアカウントを子どもに渡し、子どもは親のアカウントでゲームをやっていたはずです。
ゲームをやらせている以上、少なくとも親御さんは、日頃の親子の会話の中で、子どもが自分のアカウントでどんなゲームをしているのか、アカウントを持たせることでどんなことができるのか、SNSをどんなふうに利用しているのか、知っておいてほしいのです。
オンラインゲームが危険だからといって、「知らない人とゲームをするな」というのは、現実的ではありません。実際、アンケートでは「知らない人とゲームをしたことがある」と答える中学生は7割もいます。ですから最低限、「ゲーム上で知り合った人とは会わない」ことをルールにする必要があります。
オンラインゲームに関しては、明らかに子どものほうが詳しいはずです。それならば、子どもと一緒に親もオンラインゲームをやってみるのもいいかもしれません。ゲーム上ではどんな状況があり得るのか、どんな危険があるのか、どうしてそこまでハマるのか(やってみると意外と面白かったりします)がわかるでしょう。
スマホのフィルタリングや利用制限では子どもを守れない
私が捜査一課の刑事をしていた10年間のうち、5年間はデジタル捜査班の班長として、スマホ解析の仕事をメインにしていました。1台のスマホの中には、実に数多くの個人情報が入り込んでいます。そうであるにもかかわらず、多くの人のリスク意識が低いような気がします。
特に、子どもの場合は安易な投稿や写真のアップが思わぬ危険を呼び込むこともあります。例えば「電車が人身事故でストップ!今日は学校に行けなくてラッキー」と駅のホームの写真と共にSNSに投稿したとしましょう。
これを見てネットストーカーはこう考えます。「この子は、この駅を利用しているんだ」そして投稿時間を見れば、イコール通学時間というわけですから、「この子に会いに行くためには、この時間に張り込めばいい」となるのです。
今、リモート化が一気に進んでいます。学校でもオンライン授業が当たり前になってくる中、子どもにスマホの利用禁止や抑制を促すことは不可能です。だからこそ、スマホを持った時点で、どのようなリスクにさらされるのか、事前にスマホの危険性を正しく知る必要があります。
あらゆる制限をかけ、安全対策をしているから大丈夫だと思っていませんか?スマホを持たせなくても中古で安く買える、親が使っていないスマホをネットで使えることを、子どもたちは知っています。
どんなに大人が制限をしたりブロックをしたりしても、最終的に画面をタップして、行動を起こしているのは子ども自身だということを忘れないでください。多くの事件は、子ども自身の“行動”が起こしているのです。
※本記事はダイヤモンド・オンラインからの転載です。転載元はこちら
February 10, 2021 at 04:00AM
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